サライ編集長インタビュー「雑誌とインターネットの楽しみ方」
~サライ創刊20周年記念 特別対談~
『サライ』の20周年企画として開始した『ウェブサライ』。このウェブサイトは、日本のインターネットの老舗といえるニフティとの共同作業で実現しました。
特別対談の第1回では、サライ編集長が、この6月からニフティの社長に就任した今村 隆さんに、「雑誌とインターネットの関わり」について話を聞きました。
河内:休日はどんなふうにして過ごされるのですか?
今村:家族と車で出かけることが多いですね。
河内:40歳を過ぎてから運転免許を取られたとうかがっています。
今村:42歳の時に自動車教習所に通いました。ただ時間のやりくりが大変で、「今日、仮免を取らないと失効してしまいます」といった綱渡りでした。
当時、生活環境が変わったこともあって、運転免許がどうしても必要になったんです。それまでは自動車がなくても不便を感じなかったので、それほど関心を持っていなかったのですが、自分で運転し始めると面白い発見がありました。電車で移動するときと、自動車で移動するのとでは景色が違いますよね。また、ちょっと脇道に入ってみたら、知らなかった街並みが広がるというような、新しい発見があります。
河内: インターネットでの調べごとに似ていますね。
今村: そうですね。インターネットの検索は、最初に入力したキーワードをきっかけに自分の知らなかった情報にも接することができる。文字や写真だけでなく、音や映像などもある。
ただ「美味しい 食事」なんてことを調べると、情報が山のように出てきます。その中から何を選ぶかは、自分らしさを持っていないと振り回されてしまうことがあります。そしてある人と僕が同じことを調べても、自分の軸がしっかりしていないと得られる情報に違いが出てしまう。つまり誰でも情報にアクセスできるという意味では平等なのですが、そこに辿り着けるかどうかには個人差があるのです。自分自身に知識や経験がないとその人にとって価値のある情報や、貴重な情報にアクセスできないのです。
河内: では、インターネット初心者の『サライ』読者は大変ですね。
今村: むしろ逆じゃないでしょうか。誌面を見て感じるのは、これだけ突っ込んだ内容を面白いと感じる読者の方々は、インターネットのテクニックは知らなくても、何が大切かはわかると思うのです。検索なども、少しだけ使い方を覚えれば、良いものかそうでないものかは判断がつくはずです。『サライ』読者の方には、インターネットの情報の中から自分にとって良いものだけを仕分けて欲しいと思っているのですよ。これは面白い、こんなものはつまらないという具合に。
その意味では、この度一緒に『ウェブサライ』を作ることができたことはいい機会だと思っています。私たちには、パソコン通信時代から積み上げてきたインターネットの経験と知識があります。一方、『サライ』は幅広い分野の物事を丁寧かつ楽しく伝えてきた。両者が手を携えることで面白いことができるのではないかとわくわくしています。
逆にお聞きしたいのですが、『サライ』は20年前に創刊したわけですよね。当時50歳だった方は、いまは70歳。やはり、いまでも読者なのですか?
河内: 『サライ』は、当時45歳の編集長が50歳の読者に向けて立ち上げた雑誌です。現在は、40歳代くらいの方から、70歳、80歳の方までいるので、平均すると60歳くらいになります。「サライインタビュー」という、我々が社説のような存在にしているインタビュー記事にご登場いただく方は、90歳あるいは100歳を超えていることもあります。年を重ねても元気に毎日過ごし、しっかり仕事をされている方たちで、私たちも大いなる勇気を与えていただいています。
今村: ニフティもスタートしてから20年以上経ちます。当時パソコン通信をしていた方は20歳から30歳くらいの若い方が中心だった。それが20年経つと40歳、50歳ですよね。私たちもお客さんと一緒に成長してきたのです。そうした方たちに『ウェブサライ』は楽しんでいただけるものにしていきたいですね。

河内: 私たちは若返りということはさほど意識していなくて、たとえば団塊世代がコアファンだったビートルズなどは素材として考えていなかったんですね。ただ、団塊の世代の方々が60歳になり、ボリュームが増えている中でどうするかは課題だと思っています。『サライ』は、サブカルチャーどころかポップカルチャーを扱っていない。そちらに媚びていくのではなくて、日本人が変わらずに興味を持つもの、たとえば江戸の文化、神社仏閣、古典などをきちんと伝えることを根本に据えていこうと思っております。
ただし雑誌なので、きちんと取材して時間をかけて記事を作るのですが、あくまでも入り口だとも考えています。学生時代に習った古典や文学をなんとなく知ってはいるけれど、実際にはきちんと知らないことがある。一冊の専門書などを読むほどの時間はないけれど、『サライ』を手にとってもらうことで改めて知ってもらい、興味の幅を広げてもらえるような誌面作りを考えています。
今村: この頃感じるのは、年をとると新しく何かをしなくてもたいていの事は済んでしまうのだなということです。それはそれで構わないのですが、もっといろいろなことに興味を持ったほうが楽しいと思います。インターネットももっと活用していただくと、もっと便利で豊かになることはたくさんあるはずと感じています。
河内: 『サライ』の読者も、数年前まではインターネットを使う方はすごく少なかった。半分以下くらいでしょうか。それが今春には、8割以上の方がパソコンを持っていて、インターネットを使っていることがわかりました。
今村: アクティブな方が増えてきているのですね。
■今村 隆(いまむら たかし)
昭和24年8月14日生まれ。山口県出身。名古屋工業大学工学部卒業。昭和48年、富士通入社。平成18年にニフティに移り、本年6月社長に就任。趣味は、ドライブなど。
■河内真人(かわうち まさと)
昭和36年7月14日生まれ。北海道出身。早稲田大学第一文学部卒業。昭和61年、小学館入社。平成15年サライ副編集長、プラチナサライを経て、本年4月サライ編集長着任。趣味は、ラグビー及び伝統芸能やクラシック音楽の鑑賞など。
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