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2009年9月24日 はてなブックマーク - 小室等が語る主題歌『だれかが風の中で』誕生秘話このエントリーを含むはてなブックマーク Twitterにつぶやく

小室等が語る主題歌『だれかが風の中で』誕生秘話

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「実はバート・バカラックの『雨にぬれても』をイメージしたんです」

Komuro01_3 “フォーク界の長老”と呼ばれた小室等さん(66歳)は28歳の時に、「時代劇じゃなくて西部劇を作りたい」と市川崑監督に言われ、『木枯し紋次郎』の主題歌『だれかが風の中で』(作詞は市川崑の妻・和田夏十わだなっと)を作曲した。「だから、映画『明日に向かって撃て!』をイメージしたんですよ。この10年でやっと、この詩の本当の深さが分かってきた。齢(よわい)を重ねると分かってくるものってあるんですね」。

「時代劇を作るつもりはない。西部劇を作るつもりなんだ」「テーマは“走る”なんだよ」――多摩川の河川敷にある監督小屋に伺ったとき、市川崑監督は僕にこうおっしゃいました。そして、ご自身は映画『明日に向かって撃て!』の挿入歌『雨にぬれても』や、サイモンとガーファンクルの『コンドルは飛んでいく』、はしだのりひこの『花嫁』がお好きだと。映像だけでなく、音楽にもクオリティーの高い大衆性を求めていたのでしょう。それを聞いた僕は、当時大好きだったバート・バカラックの曲調をヒントに、『だれかが風の中で』を作りました。

スタッフそれぞれの感性が
「新しい時代劇」を生み出した

Komuro03 紋次郎は1972年に誕生しました。その前、60年代末から70年にかけては学生運動が活発で、これは日本だけではなくて世界中のことですが、若者たちが本気で『自分たちの手で世の中を変えられる』と信じていた時代でした。日本では、例えば演劇界には唐十郎さんや寺山修司さん、鈴木忠志さんなどがいて、音楽界にはフォークソングの一大ムーブメントが起きていました。世界の音楽界では、ボブ・ディランやビートルズが出て、ウッドストックやフラワー・チルドレンなどのヒッピー文化も出てきました。

そんな時代の中で、僕自身は世の中を席巻していたブラザース・フォアの『グリーンフィールズ』をはじめとする、甘いイメージのカレッジ・フォークにアンチな考えを持っていました。ですから、『だれかが風の中で』を作るにあたっては、ボブ・ディランの曲のような渋く地味な、でも自分にはカッコイイと思えるものを目指したのです。

そしてできあがったデモ・テープを、主題歌編曲担当の寺島尚彦さんが『ソルジャー・ブルー』や映画監督サム・ペキンパーの作品といった当時の西部劇、監督が目指していたであろう新しい西部劇をイメージさせる曲に編曲し、ストップ・モーションを使ったあのモダンなオープニング・シーンと、見事にコラージュされたわけです。当時の新しい西部劇は、悪いインディアンと正義の白人というものではなかった。中村敦夫さんの紋次郎も、正統派時代劇のステレオ・タイプの主人公ではない。走り回って転がりながら戦うような、木枯し紋次郎のチャンバラも、カッコいいものではなかったですよね。市川監督の「新しい時代劇を作る」というのは、ほんとのリアリティーをつくることだったんでしょう。

和田夏十さんの詩も、あの時は、28歳の僕は、こんなに深くてすばらしい詩だと理解していませんでしたね。甘く見てもここ10年くらいですかね、やっと意味がわかってきたのは。「どんなにひどい人生でも、オマエは風の中で待っている」――非常におぼつかない約束というか、待っていないかもしれない、いや、むしろもう、誰も待っていないことは自分がいちばんよく分かっている、でも待っていると言い聞かせて旅を続ける――という、心の揺れ幅、詩の重さが、この10年でようやく分かるようになりました。齢を重ねて、といっても大して立派な齢を重ねたわけでもないんですが(笑い)、ものごとが分かるようになるというのは、こういうことなのかもしれませんね。

心の中の実だけを求めて放浪する
紋次郎の浪漫が再び勇気をくれる

Komuro02_2 中村敦夫さんが、この特集インタビューの中で、オープニング・シーンの撮影だけで3ヶ月もかけたとおっしゃっていますが、それは、当時はまだ「良いものを作ればいいんだ」という気分が、テレビ界にも残っていたからでしょうね。ビジネスだけ、効率だけじゃなくて、無駄に見えてもいいから、良いものをつくれば許されるという、まだまだ芸能や文化の世界にも、パトロンたちに支えられて成立しているという側面が残っていたんでしょう。その後、フォークソングがニューミュージックになっていくように、すべてがビジネスになっていき、非効率なものづくりが許されなくなっていく。そう考えると、効率は良くてお金もあるはずの今の時代のほうが、実は不自由な時代になってしまったのかもしれませんね。

木枯し紋次郎は、「あっしには関わりのないこって・・」と言いながら、結局はかかわっていくんです、そして、何の見返りも求めずに去っていく。でも、人は、世間的にどのように認められるのか、偉くなっていくのかではなくて、その人の生き方にこそ価値があるのだというか・・。地位や名誉や金、そんな見返りはいらなくて、ただ心の中の実(じつ)だけを求めていけばいい。それを求めて旅を、人生を続けていこうというのが、紋次郎の浪漫で、それが見る人の心に宿り続けて、勇気をくれるんでしょうね。

Komuro04 『だれかが風の中で』を発売当時に聞いてくださっていた年代の方は、もはや、若いときに思い描いていた夢が、そう簡単に手に入るものではないということに気付いておられるでしょう。しかし、今からでも、その夢のために生きることは必ずできる。例えば、長年かけて会社(ビジネス)という強者の論理を身につけたのなら、今度はそれを弱者のために、例えばボランティアのような形でも、活かせばいい。それがあの日に思い描いていた夢への第一歩だと思えば、この歌も再び自分への応援歌となるはずです。なぜなら、今でも小さなライブハウスや地方のお寺などで、ささやかなライブを行なって旅を続けている僕にとっても、この歌は最高のレパートリーであり、自分への応援歌なのですから。

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