秋の奈良・高畑をそぞろ歩き
本格的な紅葉シーズンを前に、奈良を訪ねました。正倉院展(~11月12日)が行なわれている奈良国立博物館周辺は大変な賑わいでしたが、少し離れた高畑周辺は穏やかな時間が流れていました。
春日山の南の傾斜地に位置する高畑は、志賀直哉が大正時代末頃に居を構えたことで知られ、多くの画家や作家が集まった文人の町と呼ばれていました。今も瀟洒な街並みのなかに、小さな陶芸の店やカフェなどが点在しています。私は今回、春日大社表参道の「ささやきの小径」を歩き、高畑に向かいました。ささやきの小径は志賀直哉が暗夜行路の草稿を練りながら散歩した道といわれています。ひそひそと森の気配が漂うばかりの道です。
志賀直哉旧居から歩いて7分ほどで、新薬師寺に到着します。新薬師寺は天平19年(747)、光明皇后が聖武天皇の眼病平癒祈願のために建立したとされています。萩の古寺としても知られ、9月下旬には紫や白の小花が風にそよぎます。境内にはどっしりと安定感のある入母屋建築の国宝・本堂があり、国宝の本尊・薬師如来坐像と十二神将が鎮座しています。薬師如来坐像は一木彫成平安初期の代表作とされ、堂々たる体躯に大きく見開いた切れ長の目が魅力的です。
円形の須弥壇上に立つ十二神将は土を用いた塑像で、日本最大最古のもの。一体一体の躍動感ある筋肉や豊かな表情に圧倒されます。造立当初は緑や青、赤、金箔などで塗られていたといいますから、さぞや威光に満ちていたことでしょう。薬師如来を守り、12の方角を守っていることから干支の守護神としても信仰を集めています。
静謐な古刹の境内は、萩ばかりでなく四季折々のさまざまな花が楽しめます。春は連翹や桜が美しいそうです。そして今は、山茶花が次々と花開き、足元をみるとホトトギスが秋を惜しむように咲いていました。またクリスマスリースにも向く、クロガネモチの真赤な実がなり、冬への足音も感じました。
高畑には奈良の風景を愛した写真家・入江泰吉三の写真美術館や、閻魔大王を祭る白毫寺などもあり、のんびりと散策するのに相応しいエリアといえます。
志賀直哉旧居のリンク
http://narashikanko.jp/kan_spot/kan_spot_data/w_si38.html
新薬師寺のリンク
http://www.k5.dion.ne.jp/~shinyaku/honzon.html
■ライター・関屋淳子
『サライ』現役ライター。酒と桜をこよなく愛する虎党。女性トラベルライターの旅情報発信サイト『旅恋.com』代表。
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