自分にしかできない噺を
昨年1月6日に創刊したCDつき隔週刊誌『落語 昭和の名人 決定版』も、昨年末、最後の26巻めを刊行し、無事、終了となりました。ここまで支えてくださった読者の皆様、そして関係者の皆様に、改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。
最終巻は三代目桂三木助です。テレビタレントとして活躍し、落語家としても将来の大器と期待されながら早世した四代目三木助のお父さん。NHKラジオの「とんち教室」のレギュラー解答者としても人気を集めました。CDには、師の十八番『芝浜』『へっつい幽霊』を収録しています。
この2席、たんなる十八番ではありません。それぞれに、三木助の人生が色濃く投影されてます。博打うちが幽霊になって出てくる『へっつい幽霊』には、さいころ博打に身をやつし、高座名よりも「隼の七」の異名で知られた三木助の前半生が。酒に溺れる魚屋が女房の機転で立ち直るという『芝浜』には、仲子夫人と出会って荒んだ暮らしから立ち直り、名人として大成した三木助の後半生が。まさに、三木助が自己の生涯をかけて磨き上げたのが、この2席です。
落語に詳しくない方のために申し上げますと、『芝浜』も『へっつい幽霊』も古典落語で、三木助自身の作った噺ではありません。古今、さまざまな名人上手が演じています。その中で三木助の口演が際立っているのは、三木助にしかできない『芝浜』を、『へっつい幽霊』を、演じたからでしょう。
私も三木助にあやかって、自分にしかできない雑誌や本を、作ってみたいですね。
『落語 昭和の名人 決定版』編集長
小坂真吾
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