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2010年2月 4日 はてなブックマーク - たい平師匠が『芝浜』熱演――2月3日の末広亭このエントリーを含むはてなブックマーク Twitterにつぶやく

たい平師匠が『芝浜』熱演――2月3日の末広亭

 昨日も新宿末広亭「三木助追善興行」で、三代目の長女・小林茂子さんの自伝『生きてみよ、ツマラナイと思うけど』を売らせていただきました。雪らしきものがぱらつく悪天候にもかかわらず大入りで、桟敷席も8割方、埋まっていました。

 中入り前が、三代目三木助の直弟子だった林家木久扇師匠の政治家随談。小沢、麻生から大平正芳、田中角栄まで、歴代総理の物まねで大いに盛り上がりました。三木助と何の関係が? といえばそれまでですが、そこがまた木久扇師匠らしくていいです。
 さて中入り後、四代目の甥で茂子さんの長男・三木男さんが『悋気の独楽』。色物をはさんで柳家さん生師匠が『松山鏡』。八代目文楽が得意にしていた、鏡をめぐるコメディですが、生で聴くのは初めてで新鮮でした。考えてみれば、さん生師匠は小満ん師匠の弟子で、つまり八代目文楽の孫弟子なんです。
 このあたりから、あたしは本の販売という仕事を忘れ、寄席の空間と一体化しはじめました。次に三代目三木助の孫弟子・入船亭扇遊師匠が上がり、茂子さんの本と四代目のCDの宣伝(ありがとうございました!)をしていただいたあと、『浮世床』(夢の逢瀬の部分)。江戸時代の職人がそのまま高座に上がっているような、軽やかでリズミカルな語り口。トントントンッと、サゲまで一気に持ってってワッとウケてスッと下りる。さすがです。惚れ直しました。この時点であたしはもう完全に、ただのお客になりました。
 紙切りの林家正楽師匠が、いつものように見事な手さばき(鋏さばき?)で客席を沸かせたあと、四代目と親交のあった林家たい平師匠がトリで上がりました。時計を見ていないので正確にはわかりませんが、20時30分くらいだろうと思います。末広亭の終演は21時ですから、持ち時間は30分。ここでたい平師匠は、21時を15分くらい回りますが、三木助を偲んで『芝浜』をやらせていただきたい、と宣言。客席に異存のあろうはずがなく、満場の拍手で応えます。
 たい平師匠の『芝浜』は、出だしから女房の愛情が全開。亭主・勝五郎の仕事ぶりに惚れて一緒になったことを強調します。心を入れ替えた亭主も「やっぱり人間は働かなくちゃあいけねえ」(失敬! 言葉は正確ではないかもしれません)とつぶやく。夫婦愛と労働の喜びを明確に打ち出した長講。終演予定をオーバーしているのに、誰も席を立ちません。サゲのあと、満場の拍手は、幕が下りきるまで鳴り続け、幕が下りきるまで、とうとう誰ひとり席を立たず、噺の余韻に浸っていました。
 末広亭には数え切れないほど通っていますが、そのなかでも記憶に残る晩になりました。もっとも、あとで茂子さんに「あんた、お客さんになってるンじゃないわヨ、本売りなさいヨ」と叱られましたが……。

落語 昭和の名人 決定版』編集長 小坂真吾

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