【昭和が目にしみる】 第4回:城山三郎展覧~父の背中に会いに行く その2
「サライ 城山三郎特集号」(2008年2月21日号)の思い出
サライに異動してきて5年、たった一度だけ入稿中に落涙してしまったことがある。「サライ」2008年2月21日号「城山三郎の生涯に学ぶ」の最後の段落の原稿を読んでいたときのことだった。
この特集は23ページにわたって城山三郎さんの生涯をたどり、生きるために必要な3つのことを心に刻もうという企画だった。
城山さんには、「週刊ポスト」在籍時に、『指揮官たちの特攻』の著者インタビュー(2001年)と、「サラリーマンよ!」(2002年)というオピニオンページで2度インタビューをさせていただいた。後者の席上、人生を生きるには①意志と②仕事と③家族があればいい、というようなことを簡潔におっしゃられ、そのことがずっと心に残っていて、「サライ」ではこの3つの教訓を城山さんの生涯から読み解いてゆこう、という方針で取材を始めた。
サライの記事は、たとえば「奈良特集」「落語特集」のような大テーマの場合は、歴史班、美食班、旅班のように何チームかで別々に取材を進めて、入稿時に一気に70ページ以上の大特集を組み上げる、という方法もあれば、「般若心経特集」「龍馬特集」などのように、記者、カメラ、編集の最低ユニットでじっくり時間をかけ15~20ページを編むというやり方もある。城山さんの特集のときは、本文の記者にノンフィクション作家の矢島裕紀彦さん、澤地久枝さんや財界人などゆかりの人へのインタビューは医療ジャーナリストでもある油井香代子さん、写真はピカ一社員カメラマンの小倉君という4人で進めることにした。
取材の拠点は城山さんの生地・名古屋市。東区にある『文化のみち二葉館』には、城山三郎さんの膨大な遺品が生前にご本人から寄贈されている。館内には城山さんの書斎が、仕事机や椅子もそのままに移設・再現されていて、机などはまったくそのまま持って来ているから、机上の雑多な資料の散らかり具合や引き出しの中の鉛筆の減り具合が、なんとも生々しい。
城山さんの長男の杉浦有一さん、次女の井上紀子さんに許可をいただき、同館の西尾典祐館長、上中満喜館長補佐の協力のもと、貴重な遺品を撮影することになった。「さあ、どうぞ」と収蔵庫に案内されて唖然とした。なんとか数えることができたという蔵書は1万2000冊、そのほかに無数の段ボールに詰められたアルバム、ノート、メモ、手紙、絵はがき、新聞スクラップ、スケッチブック、ゴルフのスコアや旧国鉄乗車券、チラシや広告、未発表の詩編や恋愛短編小説、子供の頃の賞状にレコード、パスポート等々々々。西尾館長はぽつりと「分類もできません」とおっしゃられたと記憶する。
けっきょく下選びと撮影の2日に分けて収蔵庫の冷たい床にぺたりと座って膨大な遺品と対話させてもらった。すべて昭和の生きた実用品ばかりなので、どれを手にとっても、あ、この新聞記事のとなりのコラムがおもしろい、とか、この乗車券でどんな列車に乗ったのか、とか、このLPはどんなステレオで聞いていたんだろう、なんて油断するとついあらぬ方面に関心がすべっていくので、「目うつり禁止」「脇道禁止」「自分の趣味持ち込み厳禁」を厳しく課し、矢島さんと小倉君と①意志②仕事③家族をビジュアルに表している物件のみを集めることにした。特集ページが23ページしかないことが、こんなに窮屈だったことはない。
【井本メモ13】
文化のみち二葉館(旧川上貞奴邸)
名古屋市東区橦木町3-23 10時~17時 月曜休館 200円 電話052・936・3836
http://www.futabakan.city.nagoya.jp/index.html
【井本メモ14】
文化のみち
名古屋城から徳川園にかけて残る歴史的遺産を歩くコース。
http://www.futabakan.city.nagoya.jp/bunkanomichi.html
■サライ編集部 副編集長 井本一郎
「コラム」カテゴリの記事
- 昭和が目にしみる 第26回 どこまでも広いヒロシマ その2――「古代ハイウェイ」、そして清盛の愛した宮島を旅する(2012.02.03)
- 巨大な杯の異名~話芸のことば探訪~(2012.01.30)
- 昭和が目にしみる 第24回 「コンド・ホテル」という発見、そして沖縄農業の先駆者たち(2012.01.18)
- 泥に酔う鮒~話芸のことば探訪~(2012.01.23)
- 孝行な少年の逸話~話芸のことば探訪~(2012.01.16)
















































































コメント
ぶんかの道二葉館に行ったのを思い出しています。夫と二人ゆっくり過ごしました。「落日燃ゆ」を読んだ程度でした。そうかもう君はいないのか・・家族を愛した先生らしい見事な題名に泣けました。
戦争に翻弄させられそして失望したことなどは後々知り生前にファンになれなかったことが悔やまれました。
機会を作り、再び二葉館でDVD(みんなにお勧めしたい)を観なおしたいです。
投稿: キーチャン | 2010年5月23日 00時09分