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2010年6月 3日 はてなブックマーク - 江戸学の旗手・田中優子さん初の「落語論」、小学館101新書より発刊このエントリーを含むはてなブックマーク Twitterにつぶやく

江戸学の旗手・田中優子さん初の「落語論」、小学館101新書より発刊

_1  最近は「歴女」なんて言葉がはやったりして、「歴史ブーム」が若い女性にまで波及しているそうで・・・。若い女性には縁がないし、他人事かと思っていたんですが、この間、久しぶりに妹に会ったら、「城めぐり」が趣味だと言うんです。もちろん、仏蘭西の「シャトー」なんぞではなく、れっきとしたニッポンの城であります。

 驚いちまいましたねェ。私の息子(小学生)へのプレゼントに、城の写真集まで持って来る始末。ま、私の妹ですから若いとは言えませんが、いまだ独り身ですし、ああいうのも「歴女」と言うんでしょう。
 思えば歴史ブームというのは、私が子供のころからありました。当時は古代史に人気があって、邪馬台国の本がベストセラーになっていた記憶があります。ちなみに私も小学生のころは日本史好きでしたが、源平合戦や太平記など中世専門で、ヒーローは義経と正成。アイドルは静御前。
今思えば、ヘンな子供です。反省してます。最近の「歴女」の関心は、もっぱら戦国時代や幕末の動乱期に向いているようですが、これは不安定な世相を反映しているんですかね。
 そんな歴史ブームの歴史のなかでも、もうかれこれ20年以上、静かに続いているのが「江戸ブーム」です。大規模な動乱もなく、武士が農民を搾取するだけの、進歩のないツマラナイ時代と思われていた江戸時代。ところがその社会構造、経済システムを分析すると、合理的で無駄がなく、庶民が生き生きと暮らしていたことがわかってきました。
 この江戸ブームを担ってきた「元祖歴女」のひとりが、法政大学教授の田中優子さんです。優子先生は『江戸の想像力』や『カムイ伝講義』『未来のための江戸学』など、江戸をめぐる数々のベストセラーを刊行してきましたが、このたび、初めてとなる「落語論」を執筆。小学館101新書より、6月1日に発売されました。

田中優子・著
江戸っ子はなぜ宵越しの銭を持たないのか?
落語でひもとくニッポンのしきたり

 長~いタイトルでスビバセン。この本は、昨年刊行したCDつきマガジン『落語 昭和の名人 決定版』(全26巻)に連載されたコラム「江戸のしきたり」に、さらに40ページほど加筆してまとめたものです。古典落語に冷凍保存された「江戸のしきたり」を抽出し、江戸の社会、文化、ものの考え方、人の生き方を再構成。現代への批判として提示する、というのが、本書の一貫した姿勢です。
 なんて書くとムズカしく思われるかもしれませんが、例えば第一章は、落語『三方一両損』の、こんな会話をきっかけにしています。
「柳原の土手ェ歩ッてて、財布拾っちゃったんだよ」
「何でそんなドジなことするんでィ」
 たった2行の、見事なやりとりですね。財布を拾うのは「ドジ」なんです。江戸っ子にとっては、金を貯めることさえ恥ずかしい。「宵越しの銭を持たない」のが、江戸っ子の心意気であり、条件でさえある。それなのに落ちてるカネを拾うなんて、とんでもないことをしてくれたもんだ!ということです。
 優子先生はこの短い会話から、「宵越しの銭を持たない」江戸っ子の生き方がいかにして生まれ、支持されたかを明らかにし、さらにこの噺に秘められたもうひとつの意味まで説き明かしてくれます。それはそのまま、現代の拝金主義への批判となります。
「落語論」といっても、特定の演者や演目を論じたものではなく、落語の背後に広がる「江戸」という世界を、わかりやすく案内してくれる内容です。落語に詳しい方が読まれても新たな発見がありますし、落語ってどこが面白いんだろう、という入門以前の方にも楽しく読んでいただけます。
 224ページで756円、気軽に買えて寝転がって読める1冊です。ぜひともお読みいただき、感想をお寄せくださいますれば拙者、嬉しく存じ奉りまする。

■『落語 昭和の名人 決定版』編集長 小坂真吾

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