ホーム > 催し > 展覧会レビュー 京都国立博物館 『上田秋成展』2010年7月17日(土)~8月29日(日)

前の記事

次の記事

催し

2010年7月30日 はてなブックマーク - 展覧会レビュー 京都国立博物館 『上田秋成展』2010年7月17日(土)~8月29日(日)このエントリーを含むはてなブックマーク Twitterにつぶやく

展覧会レビュー 京都国立博物館 『上田秋成展』2010年7月17日(土)~8月29日(日)

Photo_9 上田秋成といえば怪異小説『雨月物語』の作者として知られる江戸時代の文人ですが、読み本だけでなく、俳諧、和歌、国学の分野でも多くの著作を残し、茶人としても知られていて、その活動は多岐にわたっています。
昨年は上田秋成の没後200年にあたり、これを記念して、京都国立博物館では7月17日から『上田秋成展』が開催されています。

 上田秋成は享保19年(1734年)に大阪で生まれました。家業である紙油商のかたわら和漢の書、俳諧や茶の湯に親しみ、文人として知られるようになり、33歳で浮世草子『諸道聴耳世間猿(しょどうきゝみゝせけんざる)』を上梓します。35歳のときに『雨月物語』を脱稿しますが、これを出版するまえに火災で店を失い破産します。38歳の秋成は養母、妻をかかえて路頭に迷いますが、友人らに援助を受けつつ医者修行をして、今度は医術で生計をたてるようになります。
大阪の町医者として暮らすいっぽう、執筆や勉学への意欲はおとろえず、つぎつぎと著作を発表していきます。また与謝蕪村一門、木村蒹葭堂(きむらけんかどう)、国学者・加藤宇万伎(かとううまき)、白話小説家・都賀庭鐘(つがていしょう)らと幅広く交流します。晩年は京都に移り住み、こちらでも多くの文人らと交わります。一時失明の危機に瀕しますが、これも快復し、最晩年まで執筆意欲は衰えず、文化6年(1809年)、76歳でその生涯を閉じました。江戸時代は文人たちが身分にかかわらず交流し、相互の刺激作用によってさらに文化がひろがる時代でしたが、上田秋成はそうした文人の典型的な生涯を送ったといえるでしょう。

 さて、上田秋成は『胆大小心録(たんだいしょうしんろく)』という随筆を残しています。このなかで秋成は、交流のあった画家や文人たちを、ときにはユーモラスに、ときには辛辣に批評しています。血の通った交流のあとがみてとれ、また絵の値段なども具体的に書かれているために、美術史研究上も重要な資料となっています。
 本展は日本近世文学会と京都国立博物館の共同企画となっており、上田秋成の著作、直筆の書、手紙、愛蔵品などのほか、『胆大小心録』に登場する画家たちの作品も展示しています。国文学の最新の研究成果をふまえ、新発見の資料もふくまれた展示で、文学好きにも見応えのある内容。もちろん美術好きにとっても円山応挙、伊藤若冲、与謝蕪村、池大雅、呉春、松村景文(けいぶん)といったそうそうたる京の画家たちの作品を楽しめる展観となっています。

 なお、同時に『新収品展』も開催されており、平成20年4月~21年12月のあいだに購入、あるいは寄贈された作品131点が展示されています。
「新規購入品では狩野山雪筆『明皇・貴妃図屏風』、伝狩野元信筆『耕作図屏風』が必見です。また、漆器の名品がたくさん寄贈されましたので、こちらにも注目してください」(研究員・永島明子さん)とのこと。
『上田秋成展』『新収品展』ともに、会期は8月29日(日)まで。京都の夏は猛烈に暑いですが、東山の京都国立博物館に足を運んでみてはいかがでしょう。応挙や大雅の名品が、一服の涼を届けてくれることと思います。

02

『鶏頭に蟷螂図』。伊藤若冲筆/絹本著色/縦103.1×横55.5cm/1789年。
茎が大胆にねじれた鶏頭。そのてっぺんに、花の美しさのあまり動けなくなったカマキリがとまる、若冲らしい奇想に富んだ作品。

01

『明皇・貴妃図屏風』。狩野山雪筆/六曲一隻/江戸時代初期。
玄宗皇帝と楊貴妃の悲恋を歌った白楽天の『長恨歌』に基づく作品。保存状態がきわめてよく、「京狩野」の祖・狩野山雪らしい整然とした構図、ていねいな描写がぞんぶんに味わえる。

開催場所:京都国立博物館『上田秋成展』
日時:2010年7月17日~8月29日

住所:〒605-0931 京都市東山区茶屋町527
電話番号:075・525・2473(テレホンサービス)
料金:一般 800円、大学・高校生 500円、中学生以下無料
開館時間:9時30分から18時まで(入館は午後17時30分まで)
※ただし会期中の毎週金曜日は20時まで(入館は19時30分まで)
休館日:月曜 ※ただし7月19日、20日は開館
http://www.kyohaku.go.jp/jp/index_top.html

■稲本義彦
京都生まれ。フリーランスの編集者として、おもに美術、音楽、歴史、日本文化といった分野の書籍、雑誌を手がけている。『西国三十三所結縁御開帳公式ガイドブック』(講談社)、『週刊 日本の仏像』(講談社)など企画、編集、執筆多数。

前の記事

次の記事

催し」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:

この記事へのトラックバック一覧です: 展覧会レビュー 京都国立博物館 『上田秋成展』2010年7月17日(土)~8月29日(日):