銀座に日本伝統食の「ミシュラン・トライアングル」
寿司、鰻、焼き鳥といえば、外国人たちが真っ先に食べたがる日本の伝統食。『ミシュランガイド東京2010』にも名だたる店が列記されていますが、中でも銀座のビルの地下一階に揃って店を構える『すきやばし次郎』(寿司)と『バードランド』(焼き鳥)といえば、誰もが一度は行って食べてみたいと憧れる名店中の名店です。
その日本食の聖地ともいえる場所に、6月18日新たに出店したのが、江戸末期創業の鰻店『野田岩』。『ミシュランガイド東京2010』にも名を連ねる名店で、天然鰻を食べさせる店として食通の間では昔から評判の店。5代目の金本兼次郎さんに見せてもらった来客帳には、政財界の重鎮はもちろん、志賀直哉や小津安二郎などの名前もありました。
東麻布にある本店は、飛騨の5軒の古民家を移築して造られた傑作ですが、銀座の店の玄関にも大型の木造扉が施され、中に入ると大きな梁が天井を走り、まさに古民家そのもの。しかも、高めの天井からはアンティーク調のガラス照明が垂れ下がり、椅子のモダンな赤色や、竹久夢路風の仲居さんが行き交う様は、大正ロマンさえ感じさせる落ち着いた雰囲気。そして運ばれてきた志ら焼(白焼)は、冷めないように湯を張った銅壺に入っているではありませんか。そのあたりの気配りも、さすがミシュランに掲載される店ならではです。そして鰻の味がそのまま出る志ら焼の香りの、なんと品のいいことか。本山葵を少しのせて岩塩で味わうフワフワした食感は、酒の肴にピッタリです。
もちろんそのあとは、口の中でホロホロと崩れ蕩けるような香ばしい江戸前の鰻重を。4月~12月中旬ごろまでメニューに上るという天然鰻の香りと味は「良質のバターを火の上に落としたようないい匂い。でも脂は淡白で繊細な味わいで、ワインにも合います。私も好きでね」と、82歳の今でも元気に毎朝4時に起きて鰻を捌くという、生粋の江戸っ子の金本さんは、笑いながらそう教えてくれました。土用丑の日は、仕事が雑になるからと店を閉めるというあたりにも、江戸っ子の心意気が伺えます。今年の夏は、銀座の「ミシュラン・トライアングル」で、美味しい日本の食文化を堪能してみてはいかがですか。
大きな梁が天井を走る店内。店内の装飾備品は、金本さん自ら、飛騨や京都、倉敷などから探してきたアンティーク品も多い。5代目・金本兼次郎さん(82歳)。「今年の夏は北アルプスの笠ケ岳に挑戦です。この元気も天然鰻のおかげですね」と笑う。
『野田岩』
東京都中央区銀座4-2-15 塚本ビルB1
電話:03・5524・3125
営業時間:11時30分~14時、16時30分~19時30分 入店まで
定休日:日曜・祝日
■ライター&利き酒師・田中宏幸
おいしい日本酒の伝道師となるべく、冷酒や搾りたてに始まり、錫ちろりの燗酒、さらには熟成酒・古酒などなど、毎晩毎晩五合の日本酒を、人生の使命として楽しんでいる利き酒師ライター。著書『米作りからこだわる とっておきの名酒』(小学館)ほか。
「コラム」カテゴリの記事
- 昭和が目にしみる 第26回 どこまでも広いヒロシマ その2――「古代ハイウェイ」、そして清盛の愛した宮島を旅する(2012.02.03)
- 巨大な杯の異名~話芸のことば探訪~(2012.01.30)
- 昭和が目にしみる 第24回 「コンド・ホテル」という発見、そして沖縄農業の先駆者たち(2012.01.18)
- 泥に酔う鮒~話芸のことば探訪~(2012.01.23)
- 孝行な少年の逸話~話芸のことば探訪~(2012.01.16)
















































































コメント