全329銘柄の名酒が集う「JOY OF SAKE」
「JOY OF SAKE(ジョイ・オブ・サケ)」は、毎年ホノルル、サンフランシスコ、ニューヨークの3か所で開催される、全米はもとより海外で最大の日本酒利き酒イベントです。このイベントは日本酒の美味しさを海外に広めることを目的に、2001年にホノルルで第1回が開催されました。近年は日本食ブームも手伝って毎回1会場で1000人以上を集める大人気のイベントに成長し、今回で10回目を迎えます。
イベントに出品される日本酒は純米、吟醸、大吟醸A(精米歩合40%以下)、大吟醸B(精米歩合50%以下)の4部門からなり、日本で行なわれる独立行政法人酒類総合研究所の全国新酒鑑評会にならい、全米日本酒歓評会の審査を受けます。そして、優れた日本酒には全国新酒鑑評会と同じように賞が与えられるというものです。今年の歓評会は8月17日、18日にホノルルで開催され、164の日本の蔵元から総計329銘柄が出品されました。
これらの日本酒を、独立行政法人酒類総合研究所の指導のもと、日本とアメリカからそれぞれ5人の専門家が参加して、ブラインドで審査を行なうのです。そして、「香り」「味」「バランス」「総合評価」という4つに注意を払い、利き酒を行ないます。次に上位約50%に入った出品酒が2次審査に進み、さらに吟味され、高い評価を得た日本酒には金賞、銀賞が与えられるというものです。
今回は総出品数329銘柄のうち、金賞が93、銀賞が85という結果でした。ところで、今年は「JOY OF SAKE」の10周年記念の年ということもあり、このイベントが11月2日、東京の五反田にある五反田TOCビルの13階特別ホールで、日本で初めて開催されたのです。8000円という入場料にもかかわらず、18時の開場前には受付に長い列ができ、日本酒愛好家たちの期待の大きさをうかがわせます。
そして、旨い日本酒が心行くまで堪能できるこのイベントのもうひとつの特徴が、アメリカ・ニューヨークで大人気のノブを始め、国内外に名高い12のレストランがブースを出展しており、それぞれの料理が楽しめることです。受付で12のレストランの名前が入ったチケットをもらい、各ブースで料理と交換するというシステムです。
では、早速開宴した会場を覗いてみました。会場は2ホールに分かれていて、特別ホールには大吟醸B、吟醸、純米、メインホールには大吟醸A、生酛(きもと)、山廃(やまはい)が用意され、部門ごとに分かれたテーブルには出品酒がずらりと並んでいます。各出品酒の前には酒の入った利き猪口があり、参加者は差し込まれているスポイトで自分のグラスに注ぎ利き酒するのです。会場にはすでに芳しい吟醸香も漂っており、参加者たちは目をキラキラ輝かせています。なにせ、大吟醸だけでも141銘柄が飲み放題なのですから、こんな機会はめったにありません。周りを見ていると、出品リストからまず自分が飲みたい大吟醸や、金賞、銀賞のマークがついた日本酒を選び出して、順に飲んでいる人が多いようです。しかし、中にはブースの端から順番に飲んでいる人もいました。
329銘柄すべてを利き酒するとなると、スポイト1回で約10cc注ぐとして18銘柄で約1合。329銘柄だと約1升8合になりますから、後半は足元がふらつくどころか、記憶が吹っ飛んでいるのではないか心配です。と思いきや、会の後半頃になると、「利き酒すべて完了、やったあ!」という嬌声をあげる豪傑女傑もおられましたので、上には上がいるものです。また、目立ったのは女性の参加者が多いこと。海外でも女性は多いそうなのですが、これはやはり一流のレストランの味が楽しめることも大きな要因のようです。
今回の海外組は、ノブはスパイスの効いたお刺身、ロサンゼルスから来たタカオはまぐろ生春巻き、ホノルルのボクズは骨付きカルビ肉の酒煮込みとマカデミアナッツいりむすび、サンフランシスコのヨシズは仙台みそで煮込んだ牛タンでしたが、どれも日本酒との相性は抜群で、どんどんお酒が進みます。どのブースも長い行列ができていましたが量はどれも小皿に1品と少な目で、料理というよりも酒肴という内容で統一してあるのも、日本酒がメインのイベントにマッチしているように思えます。
また、会場内には外国人の姿も多く、「ライスからこんなにフルーティで味わいのあるSAKEができるのは日本のマジックとしか言いようがない。ビューティフル!」と目を丸くしながら、楽しんでいる女性もいました。『獺祭』(山口)、『北雪』(佐渡)、『人気一』(福島)など日本の人気蔵のブース出店もあり、この日のために特別に搾った斗瓶入りの大吟醸を振舞うなど、日本酒好きの心をくすぐる趣向でイベントを一層盛り上げていました。
私も50銘柄を利き酒したあたりから、329の全銘柄を利き酒するよりも、気になる酒をじっくり楽しもうと方向転換。今回、この10年間に最高評価を獲得した吟醸部門最優秀10周年受賞銘柄『出羽桜 桜花吟醸酒』(山形)の華やかで軽快な味わいに舌鼓を打ったり、2010年優秀賞に選ばれた大吟醸B『真澄山廃純米大吟醸 七號』(長野)の瑞々しくも奥深いふくらみに感じ入ったり、『人気一ゴールド人気純米大吟醸」(福島)の豊潤かつ喉越しのよさに目を見張ったり、純米『五橋 木桶造り生酛純米酒』(山口)の幾重にも重なる複雑な味に心奪われたり・・・・・・と、21時の終了時には、まさに桃源郷にいる心もちで千鳥足状態。旨い日本酒がとことん堪能できたイベントでした。こんなイベントが毎年アメリカだけの開催なんてもったいない。来年も日本で開催されますように、合掌!
■問い合わせ先 「JOY OF SAKE」公式ホームページ http://www.joyofsake.jp/
■ライター&利き酒師/田中宏幸
おいしい日本酒の伝道師となるべく、冷酒や搾りたてに始まり、錫ちろりの燗酒、さらには熟成酒・古酒などなど、毎晩毎晩五合の日本酒を、人生の使命として楽しんでいる利き酒師ライター。著書『米作りからこだわる とっておきの名酒』(小学館)ほか。
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