山本益博さんと行く、東北レストラン食べ歩き支援の旅
東北大震災の支援の一環として、山本益博さん(以下、マスヒロさん)が全国の仲間を引き連れて、東北のレストランに食事をしに行くというので、ウェブサライも同行した。
マスヒロさん一行は、マスヒロさんとテーブルを囲む仲間たちの会員制サークル『ア・ターブル99』のメンバー6人だ。マスヒロさんはこの会の発足の経緯を、次のように説明してくれた。
「『ア・ターブル』とはフランス語で〝ごはんですよー〟という意味。これは、私が30年ほど前にフランス料理界の巨星、故アラン・シャベルから、フランスには仲間で食べ歩く倶楽部のようなものがあるので、日本でも作ったらどうかと勧められたのがきっかけでした。そして、1994年1月に正式に会が発足し、現在会員は61名です」
食事会は各回6~7人のメンバー構成で月に3回程度行なわれ、日本だけでなく海外へ旅立つこともあるという。今回の目的地は、岩手県奥州市前沢、あの前沢牛で有名な地だ。その地で2年前にオープンしたのが、フレンチレストラン『ロレオール』である。伊藤勝康オーナーシェフは、東北大震災後すぐにスタッフとともに各地に炊き出しに出かけるなど精力的に支援を続けており、さらには東京から炊き出しの応援にやってくるシェフたちの拠点のひとつにもなっている店でもある。
マスヒロさんが伊藤シェフと初めて会ったのは今年の4月20日。東京で開催された山形県の新酒鑑評会の入賞酒の発表会場で、知人の『アル・ケッチャーノ』のオーナーシェフ奥田政行さんから紹介されたという。
「伊藤シェフは、奥田さんからマスヒロさんを紹介するといわれて、わざわざ前沢から出向いてこられたと聞き驚きました。そして、奥田さんから、伊藤シェフが炊き出し支援に飛び回っていることや、東北のレストランはどこも客が激減していることなども聞きました。そこで、思いついたのが食べ歩き支援です。仲間を募って客足が減っている東北に行き、レストランで食事をし、その界隈を探索することが、ひいては地域の復興への手助けのひとつになるのではと思ったのです」(マスヒロさん)
5月22日(日曜)、東京を早朝の新幹線で出発。一の関で在来線に乗り換え、前沢駅に12時前着、そこからタクシーに乗って約8分で『ロレオール』に到着した。すぐ横は、和牛の産地らしく、『牛の博物館』になっている。店の周りは緑豊かな田園風景が広がり、店内の大きな窓ガラスからも、雄大な北上川の流れが堪能できる見事なロケーションだ。一瞬震災を忘れるほどののどかさだが、炊き出しに行っている海沿いの陸前高田市は壊滅状態。店も震度6強の地震でワイングラスなどの食器がおびただしく破損し、4~5日は後片付けで営業できなかったというほど店内もダメージを受けたらしい。
「でも、今は平常通り営業を再開しております。今日はマスヒロさんたちに来ていただいたので、腕によりを振るって料理させていただきます」という、伊藤シェフの挨拶を皮切りに料理がスタート。
この店の料理の特徴は、地元の食材をフルに使うこと。『前沢牛』はもちろん、『短角牛』『ほろほろ鳥』『佐助豚』『白金豚』などのブランド肉、北上川や三陸の海の天然魚、季節の地場の安心安全な野菜たち、春の山菜、秋のキノコなど、岩手の豊かな恵みをベースにした岩手風フレンチが味わえるのだ。今回堪能したのは、下記のコース。
ラディッシュ2種、三陸の宮古の塩
季節の山菜ウルイと天然岩魚のコンフィ、みょうが添え
シドケの香りと南部もぐりの天然ホヤ
コゴミのムース
山うどと佐助豚のソテー
アマドコロのグリルとソイのポワレ
ほろほろ鳥のスープ、アイッコ(ミヤマイラクサ)入り
短角牛リブロースのグリエ
ヒメツルコケモモのムースとソルベ
コーヒー 又は フレーバーティー
「新鮮な野菜はこんなにも甘味が際立つの」、「鮮度が命の天然ほやの旨みは三陸ならでは、すごい」、「噛み締めるほどに肉の味が染み出てくる短角牛の奥深い味わいは感激物だあ」などなど、参加者みんなが賑やかにおしゃべりしつつ、また、紫波町産のリースリングを使った自園自醸ワインなどに舌鼓を鳴らしつつ、マスヒロさんのモットーである〝おいしく食べる〟を、心ゆくまで堪能したのである。
最後に、マスヒロさんが「ロレオール」の意味を尋ねると、伊藤シェフが、「後光の意味です。岩手の恵みをフルに使ったフレンチで、後光がさすようにその恵みを伝えたいのです」と語ってくれた。すぐ近くの平泉には、世界遺産の候補に上っている、光輝く中尊寺金色堂もある。夏にむけ、マスヒロさんは仲間を募り、何度か東北支援に訪れる予定らしい。まずはこの岩手の光溢れる恵みを「おいしくたべる」旅が、マスヒロさんのお薦めだ。
■店舗情報
店名/ロレオール
住所/〒029-4205 岩手県奥州市前沢区字南陣場103-1
℡/0197・56・3324
営業時間 11時30分~14時30分(ラストオーダー)
17時30分~20時(ラストオーダー)
料金/ディナー コース5250円~(2日前までに要)予約
休日/12月30、31日 1月1日 現在は炊き出しで毎月曜日臨時休業予定なので要確認
■ライター&利き酒師/田中宏幸
おいしい日本酒の伝道師となるべく、冷酒や搾りたてに始まり、錫ちろりの燗酒、さらには熟成酒・古酒などなど、毎晩毎晩五合の日本酒を、人生の使命として楽しんでいる利き酒師ライター。著書『米作りからこだわる とっておきの名酒』(小学館)ほか。
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