タグチファインアート『向山喜章「Moonveda」展』開催中
東京・日本橋にあるタグチファインアートは、独自の視点で内外のコンテンポラリー作品を紹介する気鋭のギャラリーとして注目されています。ここで現在展示されているのが、向山喜章(むかいやまきしょう)の作品です。
向山喜章は1968年大阪府生まれ。軽井沢を拠点に、日本やドイツを中心に、ワックスを用いた独特の作品を発表しており、その作品は森美術館をはじめとして、多くの企業や個人のコレクションとなっています。
※写真はタグチファインアートの展示風景
向山の作品の特徴は、なんといってもワックス(ろう)を用いていることでしょう。分厚い半透明のワックスを透して、色彩がじんわりとしみ出るようです。ワックスは光を遮っているのか、それとも透かしているのか。そのもどかしさによって、単純明快な円や正方形が、格段に複雑で神秘的なものに見えてきます。
今回の展観では、2つの系統の正方形の作品が、左右対称に規則正しく展示されています。まるで陰と陽が呼応するようなその配置から、私は反射的に密教の両界曼荼羅(金剛界曼荼羅と胎蔵界曼荼羅)を連想しました。
ギャラリストの田口達也氏によると、向山の祖父は高野山の宮大工で、幼少時を高野山ですごしたのだそうです。高野山の諸堂で、ほとけに祈りを捧げるために灯される蝋燭に惹かれ、やがて自分の作品の素材としてワックスを用いるようになったのだとか。
向山の作品群は、まぎれもなく現代的なものです。しかし、ビルの一室の現代的なギャラリーで、この現代的な作品を見ていると、密教寺院の堂内で蝋燭の灯にほのかに照らし出された曼荼羅をながめているような気分になるのはどうしたことでしょう。ワックスが光の緩衝材となって、フォルムや色彩が優しく眼前に浮かんでくるときに、ふと太古から連綿と続く日本美が立ち上がってくるような気がします。
美術館にある作品は、評価の定まったものです。ギャラリーの魅力は、同時代に生きて、現代という世に作品を問うている作家を見ることができ、その作品の購入も可能なところです。
新しい商業ビルが立て続けにオープンして、日本橋はいっそう魅力的な街になりました。そしてこの地域には多くの意欲的なギャラリーもあります。お買い物がてら、ギャラリー巡りをしてみるのも楽しいと思いますよ。
■催し詳細/『向山喜章「Moonveda」展』
展示期間: 10月21日(金)より12月3日(土)まで
営業時間: 13:00-19:00(日月休み)
会 場: タグチファインアート
〒103-0023
東京都中央区日本橋本町2-6-13 山三ビル B1F
電話03(5652)3660
URL:http://www.taguchifineart.com/
■執筆者/稲本義彦
京都生まれ。フリーランスの編集者として、おもに美術、音楽、歴史、日本文化といった分野の書籍、雑誌を手がけている。『西国三十三所結縁御開帳公式ガイドブック』(講談社)、『週刊 日本の仏像』(講談社)など企画、編集、執筆多数。
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