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「うんてんばんてん」の差~話芸のことば探訪~

 昔の戯作には、「なんだこれ?」というような言葉も出てくる。それがまた昔の落語にも出てくる。
 『滑稽和合人』(瀧亭鯉丈)の二編に、次のようなセリフがある。

【たかでおいらとは裏表、うんてんばんてんだ】

これは、女の子に向かって、自分の顔と連れの友達の顔を比較して、「こいつのツラと俺様の面相とを一緒くたにしてもらっちゃ困るぜ」という意味で言っているのだが、「たかで」は「高が」と同じ意味で「せいぜい」。「こいつなんかどうよく見たところで、俺とは『うんてんばんてん』」だと言っている。
では「うんてんばんてん」とは何か。この語は「雲天万天」と漢字では表わす。「雲泥万里」(「うんでいばんり」。天と地ほど差があること)の訛であるらしい。
 この言葉、落語『やかん』の古い速記に出てくる。雑誌『百花園』所収の三代目柳家小さん口演版に、次のようなくだりがある。

八っつあん「アア、私のいうことはウンデンバンデンのちがいでげした」
隠居「なんだイ? ウンデンとは」
八「ところてんの腐ったのでげす」
隠「バンデンとは」
八「半天の短ッかいの」
隠「これはその、雲泥万里の相違といいましてな、雲は雲(くも)、泥は土だな。天地のあいだほど相違していることを雲泥万里の相違という」
(普通社「落語名作全集第二期・第二巻」241-242ページより引用)

というわけで、『やかん』の隠居の解釈だから実はちょっと眉唾なんだけれども、「ウンデンバンテン」さらに「うんてんばんてん」は「雲泥万里」のことなのである。多分、そうなのであろう。

■ライター/松井高志
フリーライター、1960年愛知県生まれ。著書は「人生に効く!話芸のきまり文句」(平凡社新書)、「ナンドク 難読漢字自習帳」(バジリコ)など。

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